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司馬遼太郎「花神」に中に館林藩士の名前を発見!

【花神】1972年(昭和47年)新潮社発行。 
大村益次郎の生涯を描く長編歴史小説のなかに偶然見つけた人名「塩谷良翰」。

2017年お盆休み。まとまった時間がとれたので、
司馬遼太郎の「花神」をイッキ読み。
司馬遼太郎の作品の大半は読んでいるが「花神」に食指が動かなかった。
腑分けの村田蔵六の話という勝手な思いこみがあり暗いイメージだった。

6月、磯田道史 著「司馬遼太郎で学ぶ日本史」(NHK出版新書)という新書を書店でみつけた。
(磯田氏の著作は迷わず購入すると決めてある)
新書の中で、一押しの司馬作品は「花神」と書いてあった。(「国盗り物語」じゃないんだ・・・)
----そんな司馬さんが真骨頂を発揮したのが『花神』です。
私は、司馬遼太郎全作品のなかでこの作品こそが最高傑作である、と思っています。
(64頁)-----

磯田先生の推薦ならぜひ読まなくては・・・。新潮文庫版「花神」上中下をまとめ買い。
お盆休みに読み始めたら、面白くて面白くて・・・。
1日1冊、ß3日かけて読みました。傑作です。 司馬遼太郎「花神」表紙 司馬作品の特徴「余談ながら」で始まる、膨大な歴史知識。刺激的で大好き。
余談ながら・・・・に登場する多くの人物。気にはなるが読み飛ばしておしまい。
それが今回、気になる名前に出会った。

【館林藩士の名前を見つけた!】

『花神』下巻416頁。上野の山に籠もった彰義隊一掃作戦の話にさしかかったとき、「塩谷良翰」の名を見つけて気になった。
その名前に見覚えがあったのだ。確か「館林人物誌」のなかに紹介されていた記憶が・・・・。
館林藩士とも書いてないが・・・。(司馬遼太郎氏が館林藩士と書いて欲しかったが・・・)

私の記憶は正確だった。うれしい。

花神 下巻

小説を中断して調べる気が起きなくて、一気に最後まで読了。
それから、塩谷良翰を調べることに。

館林藩士がなぜ大村益次郎と接点があるのだろうか? 
秋元の殿様が毛利家からの養子だからなのか・・・? 疑問。


近代デジタルライブラリーから「館林人物誌」を読み込み調べると。
確かにありました。「塩谷良翰」 翰(幹)の文字が旧字です。
(スキャンデータをサイトにアップ)


文中に大村益次郎に附属したと書いてある。接点があったのだ。
それにしても、館林藩士に勤王の志士が・・・。(幕末の熱狂が伝わるなあ・・)

塩谷量幹は天資剛毅奇略に富むと書かれている。奇略・・・微妙な表現だね。

館林人物誌塩谷

【塩谷良翰】(しおのやりょうかん)

天保6年1835)山形(村山郡漆山陣屋)で生まれる。(当時、秋元家は山形藩主)
11歳で館林へ(お国替えで弘化3年に館林へ移る)。
16歳で江戸に出て学問を積む。
文久元年、関西各地を歴遊し勤王諸士と交わり国事に奔走。( 勤王の志士だね。)
明治元年、官軍が東下するや館林藩が勤王と佐幕に分かれて収拾がつかない。
塩谷良翰は勤王の大義を説く。
館林藩は倒幕側になった。

明治元年閏四月参謀大村益次郎に附属。( この年、大村益次郎の世話をする係になったわけだ。)
明治3年登米(とめ)県大参事。※登米県は戊申戦争に敗れた仙台藩が減俸されて旧所領が登米県などになった。
塩谷はその後、仙台県参事、宮城県参事を務めている。
明治27年 邑楽郡長
大正12年 89歳でなくなる。
(天保、弘化、嘉永、万延、文久、元治、慶応、明治、大正まで生ききった。もう少し長生きすれば昭和まで生きたのに。)
            ●
著作として『回顧録』(長男で弁護士の塩谷恒太郎氏がまとめた1918年)
この回顧録を資料として司馬遼太郎が 『花神』(417頁)で綴った文章となった。
(それにしても、司馬遼太郎は噂に違わず膨大な資料を収集して執筆するのだね。凄い。)

おもわぬ発見が重なって、気分が高揚。
事務所近くの靖国神社境内にそびえる大村益次郎像を拝みに行った。
今までちゃんと見たことがなかった。仰ぎ見ることがなかったのだ。
銅像をよく見ると、左手に双眼鏡を握っている。しかも刀を差している。(本人は刀を使わなかったが)
解説を読むと上野の彰義隊攻撃を指揮する際のいでたちだそうだ。双眼鏡で上野方面を覗いていたのだ。
しかも銅像の向きも上野を向いている。

「灯台元暗し」靖国神社の近くにデザイン事務所を構えて37年、
幾度も大村益次郎像の前を行き来したが初めて見上げたのだ。
靖国神社大村像
▲2017年8月16日撮影。15日の終戦記念日は閣僚の靖国参拝で警備が厳しいので、毎年、終戦のお参りは16日に行っている。
今年の夏は梅雨空でした。

      ●
【コラム】
大村益次郎の肖像画は有名だ。
宇宙人のような額。頭脳明晰な脳みそが詰まり過ぎている。描いたのはキヨソネ(キヨッソーネ 1833〜1898)。
西郷の肖像画を描いたイタリア人の画家。(目がギョろっとしている西郷さん)
似てないと思うがイメージが定着されている。

肖像画にそっくりな役者が1977年のNHK大河ドラマ「花神」主演の中村梅之助。
額と眉がそっくりさん。
画像をネットで収集したのでご覧あれ。
(時代を先駆けた特殊メイクだ・・・)
大村益次郎そっくり
 (2017年8月19日アップ)